11.糸決め

前の章で巻いた糸に、瀬〆漆を塗ります。

下の写真参照ください。

 

写真左手に持っている竹製のピンセットの様な物を決め木と言います。 色々の形の物が有り、素材も竹とか木とか有りますので、自分で使いやすいものを選んでください。  但し、決め木は店では売っていないと思います。 この決め木も自分で製作したものです。

私の工房での和竿教室では、入校して最初にやってもらう作業がこの決め木作りです。

 

ここで使用する漆は瀬〆漆です。 瀬〆漆は店によって、生漆とか下塗り漆とか言っている店も有ります。

塗る時は、まず際を決めて、その後全体にたっぷりと塗っていきます。

 

そして糸決めです

上の写真の様に、漆を塗った所を決め木で挟み押えながら、竿を回転させていきます。 これをすることにより、瀬〆漆が十分に絹糸に沁み込み、更には竹の地肌にまで浸みこみます。

その結果として、糸と竹の接着をよくします。 これが糸決めの目的です。

表面に浮き出た漆は、写真の様にティシュで拭き取ります。 

これを「室」に入れて漆を乾燥させます。

翌日、漆が乾き室から取り出しました。 乾燥して漆が黒く変色しています。

これで糸決め全て完了です。

 

捕捉で「室」について説明します。 ムロと読みますが、風呂と言っている方もいます。

上記写真は私が使用している室です。 大きさはH300xD350xL2,400mm 有ります。 上下2段に竿を置けるようになっていて、室の上(フタ)と下(床)にタオルを取り付け、これに水を与えて湿度の調整をしています。 渡してある凸凹簿付いた棒の上に竿を置きます。 石鯛竿でも作らない限り、この大きさの室は必要ありません。 H180xD180XL1,800mm位の物が有れば、上下2段取れ普通の竿作りには十分です。

簡単に作りたい時には、発泡スチロールの箱をつなぎ合せて作る事も出来ます。

室は塗った漆を、ゴミや埃から守り同時に漆を硬化させる役目を持っています。 いずれにしても漆を扱う場合には絶対に必要な物です。

漆は室温20℃、湿度70%の環境が一番良いと言われていますが、湿度と温度管理が漆を扱うに当たって一番気を使う所です。 湿度・温度が高ければすぐ固まりますが、色が濃くなります。 湿度・温度を下げれば良い色が出ますが中々硬化しません。 この兼ね合いが慣れるまでは大変です。