10.糸巻き
前章で出来上がった継口やスゲ口に絹糸を巻いていきます。 口巻部分に巻く糸は絹糸に限ります。 他の糸(綿・化繊糸等)は、強度が弱かったり何よりも心配なのは熱に弱い事です。 和竿は上げ矯め(仕上の曲がり直し)の時にも熱を加えますので、熱に弱い糸を使用していると切れる恐れがあります。 従って和竿は熱に強い・強度が高い絹糸をメインに使用しています。
使用する糸は何種類かあります。 細いものですと「ベソ糸」と呼ばれているものは、タナゴ竿等の小物に使用します。 次が#50の糸でキス・カワハギ等一般的な口巻に使用します。 そして#9はキス・カワハギのリールシート取付用に、更には石鯛の継口に、その上に穴糸が有りますが、これは石鯛のリールシート取付に使用しています。
下の写真ご覧ください。
糸は先端から0.5㎜位入った所から巻いていきます。 その際、利き手で糸を引きながら、常にテンションを与えた状態で、反対の手で竹を回転させながら竿に巻いてゆきます。
上の写真が巻き上がりですが、糸が重なったり隙間が空いたりしないように、綺麗にキッチリと巻くことが肝心です。
多少隙間が開いた位ですと、後で糸の表面をガラス瓶等でこすれば直りますが、糸の重なりは後から簡単に直せませんし、その部分は漆を塗った後でも盛り上がり、平らにするの大変な作業になりますので、糸の重なりが無い様十分注意してください。
上の写真は糸を張って穂先を巻いている所です。 右手の位置を、左手の巻く位置より少しだけ上に上げて巻くと、前に巻いた糸に沿って綺麗に巻けますので試してください。 慣れてくればかなり早く巻けるようになります。
続けて飾巻も施します。 上の写真では、穂先下に細い飾巻を3本巻いて有ります。 飾巻は全体のバランスの中で行って下さい。
絹糸の色に関しては、今回の写真では、ピンクと金色を使用していますが、透き漆で絹糸の色を出す仕上以外は、何色の糸でも同じです。 漆を塗ると皆黒くなってしまいますので。 但し、暗い色より明るい色の方が巻いている時に糸目が良く見え巻きやすいという利点は有ります。